今回は相対質量について解説します。
相対質量の話の前に同位体について理解しておきましょう。
同位体とは、同じ原子だが、質量数の異なるものを言います。
原子は中心に原子核を持ち、原子核は陽子と中性子から成ります。陽子の数を原子番号といい、陽子の数によって原子の種類が決まります。また、陽子と中性子の数の合計を質量数と言いますので、同位体とは陽子の数は等しいが、中性子の数が異なる原子、ということになります。
<例題>陽子の数がp,中性子の数がqの原子がある。次の文で正しいものには〇、誤っているものには×と答えなさい。
(1) この原子の原子番号はpである。
(2) この原子のもつ電子の数はqである。
(3) pが異なっていてもqが同じであれば同じ元素の原子である場合がある。
(4) qが異なっていてもpが同じであれば同じ元素の原子である場合がある。
(5) この原子の質量数はp + q である。
<解答>
(1) 陽子数と原子番号は等しいので、この文は〇です。
(2) 中性子の数と電子の数に関係はないので、この文は×です。電子と陽子の数は等しいのでpなら〇ですね。
(3) pが異なれば原子番号が異なるので違う原子です。よってこの文は×です。
(4) q (中性子数)が異なっていてもpが同じであれば同じ原子ですのでこの文は〇です。
(5) 質量数は陽子の数と中性子の数の和ですので、この文は〇です。
さて、相対質量とは、「質量数12の炭素原子の質量を12とした時の原子の重さ」になります。例えば質量数が24の原子であれば相対質量24です。
では、質量数の異なる同位体の場合、相対質量はどうやって決めればいいでしょう?答えは存在比から平均を出すことで求めます。
<例題>
塩素には質量数35のものと37のものがあり、存在比はそれぞれ、75.8%と24.2%である。
(1) 塩素原子の相対質量を有効数字3桁で求めなさい。
(2) 塩素分子の相対質量として考えられる値をすべて求めなさい。
(3) (2)の存在比を最も簡単な整数比で答えなさい。
<解答・解説>
(1) 存在比の考え方ですが、塩素原子を100個集めたら重さ35のものが75.8個、重さ37のものが24.2個あると考えればいいでしょう。この100個の平均の重さが相対質量ですので、
(35 × 75.8 + 37 × 24.2 ) ÷ 100 = 35.484
となり、有効数字3桁だと35.5になります。周期表の原子量の欄にはこの値が載ってるはずです。
(2) 塩素分子は塩素原子が2つ合わさったものですから、その相対質量としては、
35 + 35 = 70
35 + 37 = 72
37 + 37 = 74
の3パターンがあります。
(3) さて、存在比ですが、計算しやすいように質量数35の塩素原子の存在比を3/4, 質量数37の塩素原子の存在比を1/4 として計算してみます。
質量数70の塩素分子を作るには、質量数35の塩素原子と質量数35の塩素原子を引けばいいので、その確率は 3/4 × 3/4 = 9/16 です。
質量数72の塩素分子を作るには、質量数35の塩素原子と質量数37の塩素原子を引けばいいので、その確率は 1/4 × 3/4 × 2 = 6/16 です。
ここで×2をしているのは35-37のパターンと37-35のパターンがあるからです。
質量数74の塩素分子を作るには、質量数37の塩素原子と質量数37の塩素原子を引けばいいので、その確率は 1/4 × 1/4 = 1/16 です。
これより、質量数70,72,74の塩素分子の存在比は 9 : 6 : 1となります。
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