物理基礎 摩擦力


 今回は摩擦力について、注意点を解説します。問題を解く際に引っ掛かりやすいポイントをまとめます。
 摩擦力には静止摩擦力と動摩擦力の2つがあります。静止摩擦力は物体が静止している間働く摩擦力です。加えた力と同じ大きさの摩擦力が逆向きに働くため物体が静止します。加える力を大きくしていくと、どこかで限界が来て、物体が動き出します。この限界値を最大静止摩擦力といって、静止摩擦係数μと垂直抗力Nをかけて求められます。
 動いている物体に働く摩擦力を動摩擦力といい、動摩擦係数μ’と垂直抗力Nをかけて求められます。

 引っ掛かりやすいポイントの1つ目が、静止摩擦力を求める問題で、いきなりμNを計算してしまうことです。μNはあくまで最大静止摩擦力なので何でもかんでも摩擦力ならこの公式で計算すればいいというわけではありません。
<例題1>摩擦のある床に置かれた質量10 kgの物体を右向きに引っ張った。重力加速度の大きさを9.8 m/s2、静止摩擦係数を0.5、動摩擦係数を0.2として、次の問いに答えなさい。
(1) 30 Nの力で引っ張った時、物体に働く摩擦力はいくらか。
(2) 50 Nの力で引っ張った時、物体に働く摩擦力はいくらか。

<解答>
まずは垂直抗力を求めましょう。今回は鉛直方向には重力しか働かないので、垂直抗力Nは、
N=mg = 10 kg × 9.8 m/s2 = 98 N
です。よって、最大静止摩擦力は 98 N × 0.5 = 49 N となります。
(1) ここで、解答を49 Nとしてはいけません。49 Nはあくまで最大値で、(1)では30 Nしか力を加えていませんから、摩擦力も30 Nです。
(2) こちらは50 Nの力を加えていて、最大静止摩擦力を越えていますから、物体は動き出しています。したがって、動摩擦力を求める必要があります。動摩擦力は
98 N × 0.2 = 19.6 Nです。有効数字2桁にすると20 Nですが、今回は練習なのでどちらでもいいです。

 引っ掛かりやすいポイントの2つ目が、μNのNをmgとして計算してしまうことです。例題1では確かにN = mgでしたが、Nはあくまで垂直抗力ですので、常にmgというわけではありません。
<例題2>摩擦のある床に置かれた質量10 kgの物体を上向きに48 Nの力で引っ張りながら、右向きに30 Nの力で引っ張った。物体に働く摩擦力の大きさを求めなさい。重力加速度の大きさを9.8 m/s2、静止摩擦係数を0.5、動摩擦係数を0.2とする。

<解答>
垂直抗力を求めてみると、N+48 = 98 より、N=50 Nと求まります。ですので、最大静止摩擦力は、0.5 × 50 N = 25 Nとなります。30 Nの力で引っ張っているので物体は動きます。したがって、動摩擦係数を求めると、0.2 × 50 = 10 Nとなります。

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