生物 転写と翻訳

生物


 今回は、遺伝子の転写と翻訳に関わる登場人物(人ではないですが)を整理します。DNAの複製と混同しないように注意しましょう。DNAの複製は、DNAをコピーして新たなDNAが作られますが、転写では、DNAからmRNAが作られ、翻訳では、mRNAからタンパク質が作られます。では、各プロセスを見ていきましょう。

(1) 転写
 転写を言葉で説明すると、「DNAの二重らせんの一部がほどけてできた片方の鎖を鋳型にして相補的な塩基をもったRNAのヌクレオチドが結合する過程」です。ちょっと難しいのでもう少し簡単に説明します。
 ヌクレオチドというのは、塩基、糖、リン酸が結合した化合物です。DNAの場合、塩基はアデニン(A)、グアニン(G)、シトシン(C)、チミン(T)の4種類のいずれか、糖はデオキシリボースです。RNAの場合、塩基はアデニン、グアニン、シトシン、ウラシル(U)の4種類のいずれか、糖はリボースです。
 相補的というのは、DNAの塩基とRNAの塩基が結合する際の対応が決まっているということで、DNA側のAとRNA側のU、DNA側のGとRNA側のC、DNA側のTとRNA側のA、DNA側のCとRNA側のGが結合します。
 ここまででDNAにRNAのヌクレオチドが結合しましたが、ヌクレオチドどうしはまだ結合していません。ヌクレオチドの糖がとなりのヌクレオチドのリン酸と結合することで、ヌクレオチドのつながったRNAとなります。この際に働く酵素をRNAポリメラーゼ(RNA合成酵素)と言います。ちなみに、DNAの複製の際に、ヌクレオチドどうしをつなげる酵素はDNAポリメラーゼ(DNA合成酵素)です。区別しましょう。

(2)スプライシング
 ここまでで、転写によりDNAからRNAが合成されました。このRNAには翻訳されない配列(イントロン)と翻訳される配列(エキソン)の両方が含まれています。ここからイントロンを取り除く過程をスプライシングといいます。これによりmRNAが完成です。

(3) 翻訳
 転写とスプライシングは核の中で行われますが、mRNAは核から細胞質へ移動してリボソームに付着します。リボソームでは、mRNAの塩基に対応したtRNAがアミノ酸をもってやってきます。このときの対応はAとU、GとCが対応します。例えばmRNAの配列がAGGだったら、UCCという配列をもったtRNAがやってきます。このtRNAが結合するアミノ酸は配列によって決まっているので、mRNAの配列が分かれば、どのアミノ酸が結合するかもわかります(このあたりは別で解説します)。
 あとは、tRNAの運んできてくれたアミノ酸を結合させればタンパク質の完成です。どうでしょうか?全体を通して主な登場人物は分かったでしょうか?今回はあくまで概要ですので、細かい話は次回以降にしたいと思います。では、練習問題を解きましょう。

【問題】真核生物のタンパク質合成過程に関する次の文を読んで、後の問いに答えなさい。
 まず、DNAの2本鎖の一部がほどけて、(ア)の働きによって、DNAの塩基配列をもとにRNAが合成される。真核生物のDNAにはエキソンとイントロンがあり、スプライシングによりRNAから(イ)が除かれ、(ウ)ができる。(ウ)が核から細胞質へ出て、(エ)と結合すると、(ウ)に対応するアミノ酸を結合した(オ)がやってきて結合する。アミノ酸どうしが結合することでタンパク質が合成される。

(1) 空欄(ア)に入れるのに適切な酵素を選びなさい。
1.DNAヘリカーゼ 2.DNAポリメラーゼ 3.DNAリガーゼ 4.RNAポリメラーゼ
(2) 空欄(イ)に入るのは、エキソンかイントロンのどちらか。
(3) 空欄(ウ)と(オ)に入るものをそれぞれ選びなさい。
1. mRNA 2. tRNA 3. rRNA 4.cRNA
(4) 空欄(エ)に入る語を答えなさい。

【解答】
(1) 4 (2) イントロン (3) ウ. 1 オ. 2 (4) リボソーム

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