生物 遺伝暗号(コドン)

生物

転写と翻訳について解説した際mRNAの塩基3つでアミノ酸1つを指定していると述べました。
生物 転写と翻訳 | 猿山高校 (monkey-studying.com)

どの塩基の組合せでどのアミノ酸が指定されるかはコドン表にまとめられています。教科書にも載っていますし、ネットで検索しても出てくると思います。今回は、どのように遺伝暗号」(コドン)が解読されていったのか、説明したいと思います。

まずは、そもそもなぜ塩基3つでアミノ酸を指定していることが分かったか、というところから始めましょう。遺伝暗号が解明される前から、少なくとも3つ以上の塩基でアミノ酸を指定しているはずだということは予想されていました。これは簡単な計算からわかります。次の問題を解いてみましょう。

<例題1>次の文の空欄に当てはまる数字を答えなさい。
mRNAを構成する塩基は(ア)種類なので、塩基1つでアミノ酸を1つ指定しているとすると、(ア)種類のアミノ酸しか指定できない。また、塩基2つでアミノ酸を1つ指定しているとすると、(イ)種類のアミノ酸しか指定できない。ところが、タンパク質を構成するアミノ酸は20種類あるので、これではすべてのアミノ酸を指定できない。塩基3つでアミノ酸1つを指定しているとすると、最高で(ウ)種類のアミノ酸を指定できるため、20種類のアミノ酸は十分に網羅できる。

<解答>
ア mRNAを構成する塩基はA(アデニン)、G(グアニン)、C(シトシン)、U(ウラシル)の4種類です。
イ 塩基2つだと4×4で16パターンのアミノ酸を指定できます。
ウ 塩基3つだと4×4×4で64パターンのアミノ酸を指定できます。

さて、塩基3個で1個のアミノ酸を指定している可能性が高いわけですが、本当にそうかはわかりませんね。実際に、塩基3個で1個のアミノ酸を指定していることを明らかにしたのはフランシス・クリックと、シドニー・ブレナーという人です。彼らはある酵素の遺伝子を1個ずつ消していくという実験をしました。1個消した時と2個消した時は酵素は活性を示しませんでしたが、3個消した時に活性が戻ったものがありました。これは遺伝子は3個ずつ読まれるので、3個消しても酵素の活性に重要な部分の遺伝子は問題なく読まれたためだと考えられます。

<例題2>次の遺伝子からはある酵素が作られ、赤枠部分が酵素活性に重要な部分であるとわかっている。
〇△□ 〇△□ 〇△□ 〇△□ 〇△□ 〇△□ 〇△□
この遺伝子の左から3つ目の〇を欠失させたところ、合成された酵素は活性を示さなかった。これは読み枠がずれたため赤枠部分がなくなったためと考えられる。
〇△□ 〇△□  △□〇 △□〇 △□〇 △□〇 △□ 
酵素活性を示さなかったこの遺伝子のア~ウのいずれかの位置に〇を1つ挿入したところ、1つだけ酵素の活性が復活した位置があった。その位置はどれか。
〇△□ 〇ア△□  △□〇 △□イ〇 △□〇 △□ウ〇 △□ 

<解答>
アの位置に〇を入れて、3つずつ読んでみましょう。
〇△□ 〇〇△ □△□ 〇△□ 〇△□ 〇△□ 〇△□
赤枠部分が復活しましたね。これにより酵素の活性も復活します。
イの位置に入れると、
〇△□ 〇△□ △□〇 △□〇 〇△□ 〇△□ 〇△□
ウの位置に入れると、
〇△□ 〇△□ △□〇 △□〇 △□〇 △□〇 〇△□
となり、いずれも赤枠部分は復活しません。よって、解答はアとなります。

さて、いよいよどの塩基の組合せでどのアミノ酸を指定しているのか明らかにしていきましょう。その突破口を開いたのはニーレンバーグという人物です。当時、オチョアという人が、mRNAの人工合成に成功していました。ニーレンバーグはUUUU…とUだけがつながった人工mRNAを合成し、タンパク質合成に必要な材料を入れると、なんと試験管内でフェニルアラニンというアミノ酸がつながったポリペプチドが合成できてしまったのです。この実験からUUUはフェニルアラニンを指定していることが明らかとなり、遺伝暗号の解読が進んでいきました。

<例題3>次の実験とその結果から、ヒスチジンと、トレオニンを指定する遺伝暗号をそれぞれ答えよ。
[実験1] ACACACACAC…のように、A(アデニン)とC(シトシン)が交互につながった人工mRNAからはヒスチジンとトレオニンが交互につながったポリペプチドが得られた。
[実験2]CAACAACAA…のように、CAAが繰り返す人工mRNAからは、グルタミン、アスパラギン、トレオニンがつながったポリペプチドが得られた。

<解答>
このような問題を解く際に注意が必要なのは、mRNAの一番最初から読まれるとは限らないという点です。
例えば、実験1だと最初から読むと
ACA CAC ACA CAC …と続くので、ACAとCACのどちらかがトレオニンでもう一方がヒスチジンであることが分かります。2番目から読んでも
CAC ACA CAC ACA…なので登場する遺伝暗号のパターンは同じですね。
実験2のmRNAを最初から読むと、
CAA CAA CAA CAA…
2番目から読むと
AAC AAC AAC AAC…
3番目から読むと
ACA ACA ACA ACA…
なので、登場する遺伝暗号はCAA、AAC、ACAの3パターンです。これらがグルタミン、アスパラギン、トレオニンのいずれかに該当します。
ACAは実験1でトレオニンかヒスチジンであることが分かっており、実験2の結果を合わせるとACAはトレオニンだと分かります。ACAがグルタミンやアスパラギンを指定するなら、実験1でこれらのアミノ酸が含まれるはずだからです。残ったCACがヒスチジンとなります。

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