こちらでDNAの転写・翻訳について解説しました。
生物 転写と翻訳 | 猿山高校 (monkey-studying.com)
転写・翻訳とDNAの複製は混同してしまいがちですので、区別して理解しましょう。
DNAの複製過程を解説する前に、DNAの複製方式を明らかにしたメセルソンとスタールの実験をご紹介します。
DNAの複製とは、その名の通り、DNAをコピーして新たなDNAを作ることです。
当時、DNAが二重らせん構造をしていることは知られていましたが、DNAの複製方式には3つの説がありました。
1つ目が、もとのDNAはそのままで新たなDNA2本鎖ができる説(保存的複製といいます)
2つ目が、もとのDNA2本鎖それぞれに新たにDNA鎖ができる説(半保存的複製といいます)
3つ目が、もとのDNA2本鎖は分解され、もとのDNA鎖と新しいDNA鎖が混在する説(分散的複製といいます)
図でも示しておきます。赤色が元のDNA、青色が複製されてできたDNAとします。
結論から言うと説2の半保存的複製が正しかったのですが、それは以下のような実験で確かめられました。
①大腸菌を質量数15の窒素を含む培地で育てる。
培養を繰り返すことで大腸菌内の窒素がすべて質量数15のものに置き換わります。つまりコピー元(赤色)のDNAに含まれる窒素はすべて質量数15です。
②次に大腸菌を質量数14の窒素を含む培地で育てました。
このときコピーされてできる大腸菌のDNA(青色)に含まれる窒素は質量数14です。
ではクイズです。大腸菌からDNAを取り出して重さで分類するとどうなると説1,2,3それぞれどういう結果になると予想されるでしょうか?
説1が正しいなら、赤(重い方)と青(軽い方)の2種類に分かれそうです。説2が正しいなら重さは1種類だけですね。説3が正しいなら色々な重さのDNAができそうです。
結果は重さは1種類しかありませんでした。この結果から半保存的複製が正しいことがわかります。
<例題>大腸菌を質量数15の窒素15Nを含む培地で培養し、すべてのDNAに15Nを組み込んだ後、質量数14の窒素14Nを含む培地に移した。その後世代ごとにDNAを抽出した。親のDNAは15Nの鎖と15Nの鎖から成るため、これを15N+15Nと書く。
(1)親を1代目として、2代目のDNAの14N+14N, 14N+15N, 15N+15Nの比率を答えなさい。
(2)3代目の場合も答えなさい。
(3)4代目の場合も答えなさい。
<解答>赤色が15Nを組み込んだDNA、青色がコピーしてできた14Nから成るDNAとします。
(1) 本文でも述べた通り、1代目は赤と青のペアが2組できるのみですので比率で書くと、
14N+14N, 14N+15N, 15N+15N = 0 : 1 : 0です。
(2) 図を参照頂きますと、14N+14N, 14N+15N, 15N+15N = 2 : 2 : 0 = 1 : 1 : 0です。
(3) 同じく図を参照頂くと、14N+14N, 14N+15N, 15N+15N = 2 : 6 : 0 = 1 : 3 : 0です。
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